花咲翁からのバレンタインのお返し。
そこにはほろ苦く香ばしいお茶がある。
甘く美味しいおもちがある。
暖かくも爽やかな風が吹く。
その風に吹かれて静かに舞い落ち、
あなたの頭にもふわりと乗る、
桜色の小さな花びらたちがある。
そして、安心したような寝息を立てて眠る、
ふかふかで白い毛並みを持つ犬と―――
穏やかな笑みを浮かべてそれら全てを慈しむ、
一人の翁がいる。
何の変哲もない、いつかどこかで見たような、
物語の中から抜け出てきたような、
静かな時間だけが流れる平和な縁側。
あなたは、いくらだって、そこにいてよい。
その家の住人であるかのように。
―――家族で、あるかのように。
それが、善であることだけが取り柄の男が用意できた、
精一杯の贈り物だ。